しょうだいやき
たけみやがま(旧:健軍窯)

ちか
しげ
しん

 

上益城郡

1954年
熊本県に生誕。22歳から陶芸の道を歩み始める。
小代焼を復興させた祖父・治太郎さん、父の真さんに続く3代目となる。

 

野田義昭 氏インタビュー記事(2010年頃)

小代焼は、明治維新後に細川家の庇護を断たれると窯元が次々に廃業し、衰退しますが、この貴重な焼き物文化を復興すべく、1931年に熊本市健軍で健軍(たけみや)窯を立ち上げたのが初代・ちかしげろうさんでした。
現在3代目を継ぐ近重眞二さんは、22歳でこの道へ。
「家業だったので遊びながら仕事を手伝っていました。中学生になるとロクロで湯飲み程度は作っていましたね」
小代焼は一見すると、どっしりと豪快ながら手に持つと素朴な温かみがあって深い味わいがあります。釉薬のかけ具合や焼き上げ温度の微妙な違いによって一つひとつ模様は異なりますが、複雑かつ個性的な色や模様を描き出すもととなるのが、ワラ灰、木灰、長石(ちょうせき)を調合したワラ灰釉です。
県内3カ所から取り寄せて調合した土を使い、ロクロを回しながら成形。このときに土を軽く叩き、音の響き具合で厚みを判断。ほどよい硬さに乾燥させたあと、700?800℃の窯で素焼きして釉薬を掛けると、乾いた砂に水をかけたように器が釉薬を吸い取っていきます。そしてようやく本焼きへと移り、今度は1250℃程度の熱で一昼夜かけて焼き上げます。窯を開けるまではどんな色や模様が出るか分からないため、満足いく色合いに焼き上がったときは疲れも忘れてしまうといいます。
生活様式の変化に合わせて作品内容も変わり、現在主に作っているのは日常使いの生活用品。近年はパスタ皿やフリーカップなどが若い人を中心に喜ばれています。現代的な器であっても持ち手の握りやすさや注ぎ口の角度など、どれもが使い手の身になって考えられています。
「素朴ながら、つい手を伸ばしたくなるような存在感のある器、美しく使い勝手の良い器を一品一品真心込めて作っています。絶えかけた小代焼を現代まで存続させた健軍窯(現たけみや窯)、初代の目指したもの、また、その思い。心を作品に写し、今の世に伝えていけるよう願っています」