たけかご
籠商 やままん

やま

よう
すけ

 

熊本市

桑原哲次郎 氏インタビュー記事(2010年頃)

八代市の温泉街に、1874年に創業した宮崎商店。その代を受け継ぎ籠商山満(やままん)として日奈久竹細工の技術を守り続ける5代目山田庸介さん。
「実家は日奈久に店を構える明治7年創業の老舗なんですが、当時は温泉客の土産物として竹細工が重宝されていて、日奈久にはうちの他にも百数十軒もの竹細工を作る工房があったそうです。しかし時代と共に需要が減っていき、特産品であった“日奈久籠”の技術が途絶ようとしているんですよ。僕はそれがもったいないな〜と思ったんです」
高校を卒業後、機械メーカーに就職しロボットアームなどの精密機械を作っていましたが、日奈久籠の技術を後世に残したいと退職。竹細工職人として工房の跡を継ぐことを決意します。
1993年退職後、日奈久竹細工のルーツである大分県別府市の高等技術専門学校に進学。修了後も産業科学技術センターや竹細工職人のもとで研鑽を重ね独立。現在は熊本市北区の『フードパル熊本・こだわり工房村』に工房を移転し、念願の日奈久籠作りを中心に、日々竹と向き合っています。
「最初は竹とけんかばかりしていたんですよ。捻じ曲げて、どうにか自分の思い通りに作ってやろうと。ずっとそんな感じで作っていたんですが、10年もすると、到底人間は竹には敵わないと思ったんですよね。ですから今は竹と会話をしながら作っていますね。竹に『これでいいですか?』とお伺いを立てながら作る感覚ですよね。竹が納得してくれると上手に仕上がりますが、強引にやるとトゲが出てきたり、すぐにボキっと折れたりしますからね。竹は本当に正直ですよ。今、竹が痛がっている、嫌がっている。そういう感覚をいかに身につけるかということが大事だと思います。薄く剥ぐ竹ひごなどは特に、竹と真摯に向き合った時間がモノをいうんですよ。薄さと厚さの絶妙なバランスなどは、決して自分本位の考えでは生まれませんからね」
竹の特徴や性質を読み取り、その長所を生かすことで丈夫で長持ちであることはもちろん、見た目にも美しい竹細工製品を生み出す山田さん。その座右の銘は、山田さんの竹細工の師匠でもある祖父の教えだという『一生勉強』という力強い言葉でした。