い草生産高日本一を誇る熊本県。熊本県宇城市の小高い丘の上に知的障害者福祉施設「清香園」はあります。30年以上地域に根ざした自立訓練の一環として、八代産い草を使った肥後花ござを、デザイン・染色・織り・仕上げまで、多くの行程を一貫してスタッフ達の手仕事で制作しています。園長の山内泰人さんは、クラフトデザイナーとしても現代的デザインを取り入れたオリジナルの花ござ製作の企画と監督を行っています。農耕班、養鶏班などに分かれる中、イ草班に従事しているのは約15人。作品としては敷ござ、寝ござ、コースター、ランチョンマットなどがあり、いずれもデザインやカラーが豊富で、い草を染める染料は約50種類。デザインは縞や格子柄を基調とした「掛川織」。い草が原料とは思えないほど華やかな作品です。以前は自分たちでい草の栽培も行っていましたが、現在は八代のい草を仕入れて使っています。い草を1本1本選別し、染料入りの釜で30分ほど煮沸。こうして染織した“花藺”を、織機にかけて模様を織っていきます。織り上がった花ござは、織りキズや色ムラがないかを入念にチェック。「い草の端がはずれないよう“端結び”を行いますが、織り方によって結び方も違いますし、力加減が難しい。根気の要る作業ですが、イ草班の皆さんは黙々と頑張っていますよ」